Nick Goold
ビットコイン、史上最高値から反落
ビットコインは今夏に史上最高値を更新した後、調整に苦しんでいます。過去1か月で価格は6%以上下落し、トレーダーの間では「一時的な休止」なのか「より大きな下落の始まり」なのか疑問が広がっています。
現在、ビットコインは11万〜11万2000ドルの重要なサポートゾーン付近で推移しています。このゾーンは2025年5月の高値と一致しており、価格がこの水準を維持できれば再び上昇の基盤となる可能性があります。しかし、この水準を割り込むと次のターゲットは10万5000ドルや10万ドル付近となる可能性があります。
ビットコインが下落圧力を受ける理由
直近のビットコインの弱さは、テクニカル要因と市場要因が重なった結果です。
- クジラ売り – 2025年8月、大口保有者が2万4000BTC（約27億ドル以上）を売却。この大規模売りが急落を引き起こし、レバレッジ取引の強制清算を誘発して下げを拡大しました。
- テクニカルブレイクダウン – 急落によりビットコインは100日移動平均線を下抜け、多くのトレーダーに弱気シグナルを与えました。
- ETF流入減少 – 2025年8月のETF流入は年初よりも鈍化し、需要を支える大きな要因が弱まりました。
- マクロ圧力 – 高インフレや高金利の長期化、そして米連邦準備制度理事会（FRB）の利下げ遅延が懸念されています。
- 季節的要因 – 例年8月と9月はビットコインにとって弱い月である傾向があります。
なぜテクニカル分析がビットコインに重要なのか
ビットコインは従来型の投資資産とは大きく異なります。株式は収益、債券は利払いで評価されます。FX市場では金利差が通貨の価値に影響し、高金利通貨を買い低金利通貨を売る「キャリートレード」が行われます。
しかし、ビットコインにはこうした基準が存在しません。配当や利息、キャッシュフローはなく、金融政策や国債との結びつきもありません。価格は需要と供給、そして投資家心理に大きく左右されます。そのため、テクニカル分析はビットコインの理解と取引に最も有効な手法のひとつとされています。
1. 高いボラティリティ
ビットコインは世界で最もボラティリティの高い資産のひとつで、1日で5〜10%動くことも珍しくありません。テクニカル分析はこの変動に対応し、エントリー、利確、損切りの判断を助けます。
2. 自己実現的な水準
サポートやレジスタンスは多くのトレーダーが注目することで自己実現的に機能します。例えば11万ドルを強いサポートと考える投資家が買い注文を入れることで、実際にその水準が守られるのです。
3. 「適正価値」の不在
株や債券、通貨のようにビットコインには「本来価値」を測る一般的な基準が存在しません。そのため、取引判断はテクニカル分析に大きく依存します。
4. 過去の有効性
移動平均線、フィボナッチリトレースメント、RSIなどのテクニカル指標は、過去にビットコインの重要な転換点と一致することが多く、特に200日移動平均線は強気・弱気トレンドを示す目安とされてきました。
5. 心理とモメンタム
ビットコインは恐怖と欲望に強く影響されます。レジスタンス突破は「乗り遅れたくない」買いを誘い、サポート割れはパニック売りを引き起こします。テクニカル分析はこうした群衆心理を反映し、市場心理を理解する手段を提供します。
ビットコインの現状見通し
日足チャートでは短期トレンドが明確に下向きです。10日移動平均線は下降を示し、短期モメンタムが弱いことを示しています。同時に、価格は上向きを維持する100日移動平均線付近に位置し、重要な分岐点を迎えています。多くのトレーダーが下方ブレイクか反発かを注視しています。
ビットコイン日足チャート
2025年5月の過去最高値が現在サポートとして機能しており、この水準が尊重されれば反発のきっかけとなる可能性があります。
月足チャートを見ると、2023年以降400%以上上昇しており長期上昇トレンドは維持されています。しかし、多くの投資家が含み益を抱えているため、下落懸念が広がれば利益確定売りが強まる可能性もあります。
ビットコイン月足チャート
トレーダーにとっての見通し
現在の水準では、短期トレーダーはレンジ取引の機会を見出す可能性があります。
- 10日移動平均線（約11万3000ドル）を上抜ければ買いシグナルとなり、直近高値と100日移動平均線でのサポート確認につながります。
- 売り手は10日移動平均線付近で戻り売りを狙うか、11万ドル割れで強い売りシグナルを待つ戦略が考えられます。
中長期トレーダーにとっては忍耐が最良の戦略かもしれません。
- 強気派は9万5000〜10万ドル付近での押し目買いや、11万5000ドル突破を待つ戦略が考えられます。
- 弱気派は11万ドルを明確に割り込めば売りを仕掛け、10万ドルやそれ以下を目指す可能性があります。
主要サポート水準: 11万ドル、10万5000ドル、10万ドル、9万5000ドル、7万5000ドル、6万5000ドル、5万ドル
主要レジスタンス水準: 11万3000ドル（10日移動平均）、11万5000ドル、12万ドル、12万5000ドル
ビットコイン取引のヒント
- モメンタムを尊重 – トレンドに従って取引すること。
- センチメントを注視 – ニュースやSNSで市場心理は急変する。
- 清算に注意 – 強制売却は下落を予想以上に拡大させる。
- 複数の時間軸を確認 – 日足、週足、月足を確認して文脈を把握。
- リスク管理 – 損切り注文と明確な取引計画を持つこと。
現在ビットコインは11万〜11万2000ドル付近のサポートが次の動きを決める重要なポイントです。この水準を維持できれば、供給制限、ETF需要、機関投資家の関心に支えられて再び反発する可能性があります。一方で、価格が大きく上昇した後で群集心理に左右されやすい特性もあるため、予想外の動きのリスクは残ります。しかし、そのボラティリティこそが規律あるトレーダーに多くのチャンスをもたらすのです。
