Nick Goold
手堅いニック式取引戦略
月曜特別版
ニック・グールドがお届け
世界の金融市場は忙しい一週間となりました。日本では高市早苗氏が与党の党首選で勝利したことを受け、円が急落。米国では、米連邦準備制度理事会(FRB)の議事要旨が公表され、雇用情勢の弱さを背景に2025年の追加利下げを支持する委員が多数であることが示されました。パウエル議長は、利下げを加速するにはインフレの一段の低下が必要だと述べ、米国政府のシャットダウンは続いたものの、市場への影響は限定的でした。
金価格は4,000ドルを突破して過去最高値を更新し、安全資産への資金流入が加速しました。各国中銀の買いと、世界的な金融緩和期待が上昇トレンドを後押し。シャットダウンの影響で米国の主要経済指標(雇用統計など)の公表が遅れ、投資家は新たな材料に乏しい状況が続きました。

金曜日、市場はトランプ大統領が米中貿易戦争を再燃させたことで大きな衝撃を受けました。大統領は2025年11月1日から(中国側の対応次第ではそれ以前に)中国からの全輸入品に対して100%の関税を、既存の30%に上乗せすると発表。これは、電子機器やハイテク製造に不可欠なレアアースの輸出規制強化という中国の動きへの対抗措置です。発表後は、投資家がポジションを急ぎ手仕舞いし、リスク資産が急落しました。
今週の市場見通し
米国株
ダウ平均は、トランプ大統領による対中関税発表を受けた先週金曜日の大幅安で、直近2か月の上昇分をほぼ帳消しにしました。過去同様に早期合意への期待はあるものの、年初来で米株が依然大きく上昇していることを踏まえると、一段安の可能性は残ります。トランプ氏の出方は読みにくいものの、金曜安値を維持できれば短期的な反発もあり得ます。中期目線では、7月の過去最高値を上回っているうちは押し目買いも選択肢ですが、悪材料ヘッドラインには要警戒です。レジスタンスは46,000/46,500/47,000/48,000、サポートは45,000/44,000/43,000。
日本株
日経225は、月曜の祝日明けに米中貿易摩擦の再燃と、公明党の連立離脱による政局不透明感を織り込む形で、今週は上値の重い展開が見込まれます。上昇が続いてきただけに、投資家心理が悪化すれば下振れリスクも。短期的には、大きな値動きに対する戻り売り優位ながら、双方向のデイトレ機会も想定。中期では、米中協議の進展や自民党の新たな連立構築が見えるまで新規の押し目買いは慎重に。レジスタンスは47,000円/48,000円、サポートは45,000円/44,000円/43,500円。
ドル/円(USD/JPY)
高市早苗氏の自民党総裁選勝利を受け、景気刺激に前向き=ハト派との見方から利上げ観測が後退し、ドル円は上昇。円安の速さに対する警戒も出ました。週後半は米中摩擦の再燃でいったん売られたものの、週足では大幅高を維持。首相指名の不確実性が残る中、ボラティリティの高い展開と一時的なドル安・円高(反落)も想定されます。戦術面では、150円近辺の押し目買い(タイトな損切り)と、152円超での戻り売りが選択肢。レジスタンスは152/153、サポートは150/149/148/146。
金(Gold)
金相場は上昇基調を継続し、4,000ドルを再び突破。米ドル保有の代替としての買いが続きました。いったん天井感が出た場面でも、対中関税発表が買いを再加速。10日移動平均線を上回る限りは上値追い優勢のスタンスが有効です。ただし、米中合意が進展し、価格が移動平均線を下回る場合は短期の戻り売り局面も。レジスタンスは$4,100/$4,200、サポートは$4,000/$3,900/$3,800。
原油(WTI)
WTI原油は、$60のサポートを割り込み、再燃する米中摩擦による世界景気・需要懸念で弱含み。短期での早期解決は見込みにくく、次のターゲットは$55。当面は、下向きの移動平均線に対する戻り売りが有効。レジスタンスは$60/$66.5/$70/$75、サポートは$55/$50。
ビットコイン
週初に米利下げ期待で過去最高値を更新した後、米中摩擦再燃で急反落し、2025年8月の安値圏まで下落。短期的には、$107,000の重要サポートを維持できれば自律反発も見込めます。レジスタンスは$117,000/$120,000/$125,000、サポートは$107,000/$105,000/$100,000。
今週の主な予定
月曜:中国・貿易収支、米国・建設支出
火曜:豪州・RBA議事要旨、英国・失業率、EU・ZEW景況感、米国・パウエル議長発言
水曜:中国・CPI/PPI、日本・鉱工業生産、EU・鉱工業生産、米国・CPI、NY連銀製造業景況指数、地区連銀経済報告(ベージュブック)
木曜:豪州・失業率、英国・GDP/鉱工業生産/貿易収支、EU・貿易収支、米国・PPI/小売売上高/企業在庫
金曜:EU・CPI、米国・住宅着工許可/住宅着工件数/鉱工業生産
今週は、中国の対応やトランプ大統領の交渉動向次第で、投資家が年初来懸念してきた本格的な貿易戦争のスタートとなる可能性があり、相場の変動が大きくなる恐れがあります。日本では、与党が連立相手を模索する動きが注目点。米国では、インフレ率や小売売上高など重要指標の結果が、次回のFRB利下げ時期の手掛かりとなり、為替・株式・商品の値動きを左右しそうです。
