手堅いニック式取引戦略

月曜特別版

ニック・グールドがお届け

市場は先週の米国雇用統計の悪化を引き続き分析し、9月の米連邦準備制度理事会（FRB）による利下げ観測が高まりました。その後の注目は関税交渉に移り、トランプ大統領はスイスやブラジルを含む複数の国に新たな関税を発表しました。スイスの対米金輸出には39％の関税が課され、安全資産需要を押し上げて金価格が上昇しました。トランプ大統領のチームは次期FRB議長の人選も進めており、利下げに前向きな人物が選ばれるとの観測が出ています。米国PMIは予想を上回り、ドルを下支えしました。

英国では、イングランド銀行が予想通り0.25％の利下げを行いましたが、数人の政策委員が反対票を投じ、決定は予想以上に接戦となりました。この予想外の反対が利下げにもかかわらずポンド高を支えました。一方、米国株式市場は人工知能（AI）への期待感を背景にハイテク株が上昇し、大きく反発しました。

米ドルは、米国雇用統計の悪化による弱含みが続き、一時下落しましたが、週末にかけて下値を支えられ、高値近くで引けました。金はスイスへの関税発表を受けて上昇を続け、投資家は貿易摩擦への懸念と米企業の好調な決算を織り交ぜてリスク選好を改善させました。

今週の市場

米国株

米国株は先週、弱い雇用統計による下げを取り戻し、予想を上回る企業決算が新たな関税懸念を和らげました。米国内で生産する多くの企業は最も厳しい措置から免除され、FRBの利下げ期待もセンチメントを支えました。反発は好材料ですが、ダウ平均はS&P500やナスダックに比べて出遅れており、10日移動平均線は依然として下向きです。短期的には横ばい推移が続く可能性が高く、レジスタンスは44,000、44,500、45,000、サポートは44,000、43,000、42,000、41,750にあります。

日本株

日経平均株価は先週4％超上昇し、歴史的高値に迫りました。米国との貿易が当初予想よりも日本経済に好影響を与えるとの楽観論が広がったほか、特にソフトバンクの好決算が指数を押し上げました。この上昇の強さは市場の予想を上回り、中期的な見通しはポジティブです。ただし、短期的には買われすぎの水準であり、歴史的高値のレジスタンスをまだ突破していないため、押し目買いが望ましい状況です。レジスタンスは42,474円と43,000円、サポートは41,500円、41,000円、40,000円にあります。

ドル円

ドル円は、弱い米雇用統計の衝撃でボラティリティが低下し、一週間を通じて横ばいで推移しました。市場は現在、日本がいつ利上げを行うか、また米国がいつ利下げを開始するかの兆候に注目しています。先週はサポートが維持され、10日移動平均線は横向きです。今週は米国のインフレ指標が焦点となり、レンジ取引が引き続き有効とみられます。レジスタンスは148、149、150、サポートは147、146、145にあります。

金

先週の金価格は大幅に上昇し、米国の利下げ期待と続く関税摩擦が買い意欲を後押ししました。特に、米国が特定のスイス産金地金に最大39％の高関税を課す決定を下したことが米国金先物を史上最高値に押し上げました。金は依然として3,250ドルから3,450ドルの広いレンジ内にありますが、近くレジスタンスを突破する兆しを見せており、押し目買いが推奨されます。レジスタンスは3,450ドル、サポートは3,350ドル、3,300ドル、3,250ドルにあります。

原油

WTI原油は先週、重要な65ドルのサポートを割り込み、毎日下落しました。背景には、新たな米国関税による世界需要減退懸念、地政学的な不透明感、OPEC+の増産による供給過剰懸念があります。また、米国とロシアの間でウクライナ紛争を巡る外交的解決への期待も売りを促しました。市場が65ドルを下回ったことで、60ドルやそれ以下の水準を試す展開が予想されます。やや売られすぎの状況ですが、戻り売りが依然として有効です。レジスタンスは65ドル、70ドル、75ドル、サポートは60ドル、55ドルにあります。

ビットコイン

ビットコインは先週、112,000ドル付近の過去最高値圏で買い支えが入り上昇しました。リスク選好の改善が支えとなった一方で、新たな関税はビットコインにとってマイナス要因とみられています。10日移動平均線が横ばいであることから短期的な上昇余地は限られますが、中期的な見通しは依然としてポジティブであり、押し目買いが推奨されます。レジスタンスは120,000ドル、125,000ドル、150,000ドル、サポートは112,000ドル、110,000ドル、105,000ドルです。

今週の注目

火曜日：オーストラリア準備銀行（RBA）政策金利発表、英国失業率、EU ZEW景況感指数、米国CPI
木曜日：オーストラリア失業率、英国GDP、EU GDP、米国PPI、米国新規失業保険申請件数
金曜日：日本GDP、日本鉱工業生産、米国小売売上高、米国鉱工業生産、米国ミシガン大学消費者信頼感指数

今週は米国のインフレ率と小売売上高という重要経済指標が市場動向に大きな影響を与える見込みです。もう一つの焦点は米中貿易問題で、両国は8月12日に期限を迎える90日間の関税休戦の延長についてまだ合意していません。この期限や新たな貿易関連ヘッドラインは、市場心理を急速に変化させ、大きな値動きを引き起こす可能性があります。

市場はまた、トランプ大統領がFRBの金利政策に影響を与えようとする中、次期FRB議長人事の議論にも注目しています。先週の価格動向がレンジ内にとどまったことを踏まえると、重要指標の発表、貿易交渉の期限、政治的動きが重なる今週は、短期的な取引機会が多く活発な展開になる可能性があります。