Nick Goold
静かな相場は、せっかちなトレーダーには退屈に感じるかもしれませんが、規律を守るトレーダーにとっては安定した低ストレスの利益源となります。しっかりと計画を立てることで、落ち着いた時間帯に得られる小さくても着実な利益は、長期的な成功の基盤となります。この記事は、第1回で解説した「自分のトレードスタイルを相場環境に合わせることで安定性と収益性を高める」考え方を発展させた内容です。
静かな相場に注目すべき理由
静かな相場は、東京・ロンドン・ニューヨークなど主要市場のオープン後、初動の活発な動きが一巡したあとによく現れます。新しいニュースが少ないため値動きは鈍くなり、テクニカル指標も横ばいとなりやすく、明確なレンジが形成されます。こうした落ち着いた時間帯は、トレーダーにとってセットアップを研究し、エントリーを計画し、注文を慎重に出す余裕を与えてくれるため、レンジ取引を見つけやすく管理もしやすくなります。
静かな相場での戦略
レンジトレード
静かな相場では、価格が明確なサポートとレジスタンスの間を何度も行き来することがよくあります。
- 取引方法:サポート付近で買い、レジスタンス付近で売る。
- 例:USD/JPYが150.20(サポート)と150.60(レジスタンス)の間で推移している場合、150.25で買い、150.10にストップを置き、150.55付近で利益確定します。
- ヒント:ボリンジャーバンドを使って価格が横ばいレンジ内にとどまっているか確認しましょう。さらに10期間単純移動平均線も注視し、価格が大きく上回ったときは売り、下回ったときは買いを検討します。これらの動きはレンジへの急速な戻りを示すことが多いです。
フォルスブレイクアウト

価格が一時的にレジスタンスを上抜け、またはサポートを下抜けしても、すぐにレンジ内へ戻ることがあります。
- 取引方法:素早い反転を待ち、レンジ内への戻りを狙って取引します(「フェード」とも呼ばれます)。
- 例:EUR/USDが1.0750から1.0765へ一瞬上昇したあと、数分以内に1.0750を下回った場合、1.0750付近で売りエントリーし、1.0770上に小さなストップを置き、レンジ下限を目標にします。
- ヒント:ローソク足の長いヒゲや出来高の急減は反転の初期サインとして有効です。
関連市場へのローテーション
メインで取引している市場があまりに静かな場合は、少しだけ値動きが活発な類似市場を探してみましょう。
- 例:USD/JPYが動かないときは、ややボラティリティの高いGBP/JPYやEUR/JPYを検討します。
- ヒント:金やダウなど全く性質の異なる市場へ移るのは、十分な経験がない限り避けた方が無難です。
静かな相場で規律を保つ方法
- ポジションと目標の調整:ややポジションサイズを増やしつつ、ストップ幅と利益目標を小さくして利益を確保します。平均利益が平均損失を上回るリスクリワード1以上を維持しましょう。
- 休憩を取る:相場が静かなままなら一旦離れましょう。退屈からの無駄な取引や質の低いエントリーを防げます。
- 損失上限と取引時間を設定:1日の最大損失額や取引時間を決めておくことで、急なボラティリティ上昇時にも過剰な取引や追いかけ売買を防ぎます。
静かな相場に潜む主なリスク
- 突然のニュース:重要な経済指標や要人発言など予期せぬニュースで、落ち着いたレンジ相場が一瞬で急変することがあります。経済カレンダーを常に確認し、中央銀行の発言や主要指標発表などに備えましょう。
- 過剰取引:レンジ幅が極端に狭い場合、スプレッドが利益を食い尽くします。無理に取引を重ねれば小さな損失を積み上げるだけです。良いチャンスがなければ取引しないことが最良の選択になる場合もあります。
- 重要テクニカル水準の接近:長期チャートの大きなサポートやレジスタンスに価格が近づくと、市場は一方向へ想定以上に速く、遠くまで動く可能性があります。こうした状況は通常の静かな相場とは異なり別の戦略が必要になるため、取引を控える方が賢明です。
静かな相場で実力を磨く
静かな時間帯は、リスクを抑えながらトレード技術を磨く絶好のチャンスです。次の点を意識しましょう。
- 取引前にサポートとレジスタンスを書き出す
重要な価格水準を事前に明確にしておくと、相場がその水準に到達した際も迷わず対応できます。 - 目標到達までの平均時間を把握する
落ち着いた時間帯で利益や損切りに到達するまでの平均時間を記録しておくと、早まった利確を防ぎ、落ち着いて待つ力が身に付きます。 - 取引時間帯の平均ボラティリティを測る
自分が取引する時間帯の平均レンジ(pipsやポイント)を把握しておくことで、現実的なストップ幅と利益目標を設定できます。
これらを実践することで、静かな相場を忍耐力と規律を養い、安定した利益を目指すための訓練の場へと変えることができます。
静かな相場で利益を守るためのヒント
- 質の高いセットアップだけを狙う:取引しない日があっても構いません。明確なチャンスを待つことが資金を守り、成長につながります。
- エントリーと目標に忍耐を持つ:静かな相場は動きが遅いため、予定した価格までしっかり待ち、利益目標に到達するまで焦らず見守ります。
- 状況が急変したら一時停止:突発ニュースや急なブレイクアウトでボラティリティが上がった場合は、新規取引を控え、戦略を見直してから次の行動を決めましょう。
静かな相場は忍耐と規律を報います。明確なレンジを取引し、まれなフォルスブレイクアウトを捉え、何も明確でない時は自信を持って待つことで、安定した利益と長期的な成功につながる習慣を築けます。
次回の記事「通常の相場で安定して取引を続ける:着実な成功を築く方法」では、これらのスキルを日常的な相場環境にどう適応し、ボラティリティが通常レベルの時でも安定したパフォーマンスを保つかを解説します。