Nick Goold
デイトレーダーやスイングトレーダーは、短期的な値動きのすべてを取ろうとしてしまいがちです。価格が常に上下する中で取引を続けると、判断が混乱し、過剰なトレードにつながり、不要な損失を招きやすくなります。長期トレンドをガイドとして使うことで、トレード判断は大きくシンプルになります。明確な方向性を持つことができ、すべての値動きに反応するのではなく、勝率の高いセットアップだけに集中できるようになります。
短期トレードを長期トレンドに合わせることで、次のようなメリットが得られることが多くなります。
- より良いエントリーポイント
- 明確なストップロスポイント
- 利益が出ているトレードをより長く伸ばせる
長期トレンドに注目することで、トレードは落ち着き、より構造的になります。無駄なトレードを避け、リスク管理が明確になり、デイトレードやスイングトレードのパフォーマンスを着実に改善することにつながります。
なぜ長期トレンドが重要なのか
多くの主要市場では、強い長期的なモメンタムが見られます。ダウ・ジョーンズのような株価指数は史上最高値を更新し、金は過去最高水準まで上昇、ビットコインも長期的な上昇トレンドを維持しています。市場が長期間にわたって明確なトレンドを示している場合、それは継続的な買い需要を反映していることが多いです。トレーダーにとって重要なのは、強い長期トレンドがあることで方向性が明確になり、トレードの選別精度が高まる点です。
簡単に言うと、
- 金が数か月にわたって上昇トレンドにある場合、短期的な下落は大きな転換ではなく、押し目であることが多い
- 上昇トレンドでは、短期的な弱さの後にすぐ買いが入りやすい
一方で、どんなトレンドも永遠には続きません。ビットコインのような強い長期トレンドであっても、いずれ勢いが鈍ったり、終わりを迎えることがあります。そのため、規律あるトレードは常に重要です。
長期トレンドを理解することで、デイトレーダーやスイングトレーダーは市場の方向性に沿った取引ができ、より大きな利益を狙いつつ、逆行時に感情的な判断を避けることができます。
金の月足チャートに見られる長期上昇トレンド
トレンドに沿って取引する力
1. 長期トレンドに従うとタイミングが取りやすくなる
長期トレンドに従うことで、買うか売るかを迷う必要がなくなります。
- 長期トレンドが上向きなら、デイトレードやスイングトレードでは買い場を待つ
- 長期トレンドが下向きなら、売り場を待つ
これにより多くの迷いが消えます。すべての値動きに反応するのではなく、押し目を待ち、一方向だけにエントリーを絞ることで、エントリーのタイミングは自然と明確かつ安定してきます。
2. 強い市場の流れに逆らわずに済む
長期トレンドは、大口投資家や機関投資家によって形成されることが多く、初心者が想像する以上に長く続くことがあります。
強い上昇トレンドの中で「買われすぎ」と判断して売り向かうなど、トレンドに逆らう取引は損失につながりやすいです。市場は短く調整した後、再び本来の方向に動くことが多いからです。
長期トレンドに沿って取引することで、資金力と忍耐力を持つ経験豊富なトレーダーと戦う必要がなくなります。結果として、市場の強い側に立ち、利益の出ているトレードをより長く維持しやすくなります。
長期トレンドとは何か
長期トレンドとは、一定期間にわたる市場の大きな方向性を指します。
- 上昇トレンド=数週間〜数か月にわたり買い手が主導
- 下降トレンド=売り手が主導
- 横ばい=どちらも主導権を握っていない(取引が難しいことが多い)
「長期」の定義はトレードスタイルによって異なります。
- デイトレーダー:日足または週足
- スイングトレーダー:週足または月足
長期トレンドの見極め方
長期トレンドを判断するのに、複雑なツールは必要ありません。長い時間軸のチャートで、シンプルな方法を1つ使うだけで十分なことがほとんどです。
日足・週足・月足チャートで、方法1または2を使ってください。
ダウ・ジョーンズ日足チャート:高値・安値を切り上げ、10日移動平均線が上向き
1)移動平均線を使う方法
多くのトレーダーは、日足・週足・月足に100本または200本の移動平均線を使います。
見方はシンプルです。
- MAが上向き+価格が上 → 上昇トレンド
- MAが下向き+価格が下 → 下降トレンド
- MAが横向き → レンジ・不安定な相場
この方法は、方向を傾きで判断できるため、迷いが少なく非常に有効です。
2)高値・安値の切り上げ/切り下げ
- 上昇トレンド:高値・安値ともに切り上げ
- 下降トレンド:高値・安値ともに切り下げ
高値・安値の切り上げが止まれば、上昇トレンドは終わった可能性があります。
切り下げが止まれば、下降トレンドは終わった可能性があります。
明確な流れがない場合、市場はレンジになりやすいです。
長期トレンドを実際に動かしている要因
チャートは「何が起きているか」を示します。ファンダメンタルズは「なぜそれが続いているか」を説明します。
長期トレンドは主に次の要因によって動きます。
- 金利と中央銀行の政策
- インフレ期待
- 米ドルの強弱
- リスクセンチメント(恐怖か楽観か)
- 地政学リスク
- 大きなテーマ(株式市場におけるAI期待など)
最近の例
2025年の金の上昇は、主に次の要因に支えられています。
- 安全資産としての需要
- 米ドル安
- 米金利の低下(現金より金を保有する魅力が高まる)
2025年の米国株上昇は、次の要因が支えています。
- 低金利により、債券より株式が魅力的に見える
- 貿易・関税問題への警戒感の後退
- AIや将来の企業利益成長への期待
長期トレンドを動かしている要因を理解することで、そのトレンドが続きそうか、あるいは環境が変わり始めているのかを判断しやすくなります。これにより、短期的な値動きに振り回されず、市場の正しい側に立ち続けることができます。
実践的なトレード戦略
戦略1:長期トレンドに従う
- 長期トレンドが上 → 買いを狙う
- 長期トレンドが下 → 売りを狙う
取引方向を一つに絞ることで、判断がシンプルになります。
エントリータイミング:
短期チャート(日足・1時間足・5分足)で押し目や戻りを待ちます。
上昇トレンドではサポート、下降トレンドではレジスタンスを維持した場面、短期移動平均線付近でエントリーすることが多いです。
リスク管理:
- 買いの場合は直近安値の下、売りの場合は直近高値の上にストップ
- ターゲットは直近高値・安値付近
- 強いトレンドでは、トレーリングストップで利益を確保

戦略2:長期トレンドの終わりを狙う
この戦略は、大きなトレンド転換を狙うもので、難易度は高めです。
- 長期上昇トレンドの後 → 売りを検討
- 長期下降トレンドの後 → 買いを検討
長期トレンドが終わる兆しが出たときに、逆方向へ取引します。
エントリータイミング:
- 長期チャートで上向きの移動平均線を下抜け、短期チャートでサポートを割ったら売り
- 長期チャートで下向きの移動平均線を上抜け、短期チャートでレジスタンスを上抜けたら買い
リスク管理:
- 売りは直近高値の上、買いは直近安値の下にストップ
- ストップは小さく設定
- 目標は直近高値・安値、または買われすぎ・売られすぎ時の移動平均線への戻り
多くのトレーダーにとって、トレンド転換を狙うよりも、長期トレンドに従う方がシンプルで安定します。
長期トレンドを使うことは、デイトレーダーやスイングトレーダーがより効果的に取引するための、最も簡単な方法の一つです。明確な方向性が得られ、市場に逆らうトレードを避けることができます。
覚えておいてください。
- 長期トレンドは方向を示す
- 短期チャートはタイミングを示す
