Nick Goold
相場は、1年を通して同じように動くわけではありません。春や秋には大きなトレンドにつながる値動きでも、7月や8月にはすぐに勢いを失い、サポートとレジスタンスの間で長く推移することがあります。
一方で、夏の相場は突然動き出すこともあります。数時間ほとんど動かなかった後、予想外のニュースをきっかけに急変するケースもあります。こうした季節的な特徴を理解しておけば、相場に合った戦略を選び、現実的な利益目標や損切り幅を設定し、チャンスが少ない場面で無理に取引することを避けやすくなります。
時期によって相場が変わる理由
トレード戦略には、それぞれ得意な相場環境があります。ブレイクアウト戦略では、価格が重要な水準を抜けた後も、その方向への動きが続く必要があります。トレンド戦略では、上昇や下落を支える十分な買い圧力や売り圧力が必要です。一方、レンジ戦略では、価格がサポートとレジスタンスの間で推移することを想定します。
こうした相場環境は、季節によって変化します。夏の静かな相場では、ブレイクアウトが失敗し、価格がすぐにレンジ内へ戻ることがあります。そのためレンジ戦略が機能しやすくなる場合がありますが、重要なニュースによって突然大きく動く可能性には注意が必要です。
ただし、7月や8月だからという理由だけで、戦略を変える必要はありません。大切なのは、現在の相場環境を確認し、必要に応じてエントリーの選び方、ポジションサイズ、利益目標、損切り幅を調整することです。
ボラティリティを理解する
ボラティリティとは、価格がどの程度動いているかを示すものです。相場が活発なのか、それとも静かなのかを判断するために役立ちます。
ボラティリティが高いと、価格は短時間で大きく動きやすくなります。相場に一方向へ動き続ける力があるため、ブレイクアウト戦略やトレンド戦略が機能しやすくなります。反対に、ボラティリティが低いと、価格はゆっくりと動き、サポートとレジスタンスの間にとどまりやすくなります。このような相場では、サポート付近で買い、レジスタンス付近で売る方法が合う場合があります。
ボラティリティは、適切な利益目標や損切り幅を決める際にも役立ちます。活発な相場では現実的な目標でも、静かな夏の相場では遠すぎることがあります。また、1日の値動きが小さくなっている場合は、損切り幅を通常より狭くする必要があるかもしれません。
そのため、多くのトレーダーはATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)や、直近の日足・週足の値幅を確認しています。現在の相場がどの程度動いているかを把握することで、すべての取引に同じpips幅を使うことを避けられます。
年間を通したボラティリティの分析
夏の相場が本当に静かになりやすいのかを確認するため、USD/JPY、ビットコイン、WTI原油、ゴールド、US30、JPN225について、約10年間の月次価格データを分析しました。
各月の値幅は、以下の計算式で算出しています。
月間高値 − 月間安値
その後、通常の月間平均値幅と、7月および8月の平均値幅を比較しました。
通常月と比較した7月・8月の値幅
| 銘柄 | 月間平均値幅 | 7月平均 | 平均との差 | 8月平均 | 平均との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 518ピップス | 581ピップス | +12% | 465ピップス | −10% |
| ビットコイン | 8,843ピップス | 7,385ピップス | −17% | 7,413ピップス | −16% |
| WTI原油 | 995ピップス | 950ピップス | −5% | 823ピップス | −17% |
| ゴールド | 1,287ピップス | 1,105ピップス | −14% | 1,226ピップス | −5% |
| US30 | 2,082ピップス | 1,582ピップス | −24% | 1,799ピップス | −14% |
| JPN225 | 2,336ピップス | 2,013ピップス | −14% | 2,493ピップス | +7% |
本分析では、1pipsをUSD/JPYは0.01円、ビットコインは1ドル、WTI原油は0.01ドル、ゴールドは0.10ドル、US30は1ポイント、JPN225は1円として計算しています。
今回の結果から、すべての市場で同じではないものの、夏に共通する傾向が確認できました。
7月は、6市場のうち5市場で月間値幅が通常より小さくなりました。唯一の例外はUSD/JPYで、7月の平均値幅は通常より約12%大きくなっています。
8月も5市場で平均を下回りましたが、この月の例外はJPN225でした。8月の値幅は、全期間の平均を約7%上回っています。
6市場全体では、7月の値幅は通常より約10%、8月は約9%小さくなりました。毎年の夏が必ず静かになるわけではありませんが、大きな値動きや長く続くトレンドが少なくなる可能性を考えておく必要があります。
夏に相場が静かになりやすい理由
市場参加者が減る
7月と8月は、米国や欧州で休暇を取る人が増える時期です。取引デスクは通常どおり稼働していますが、シニアトレーダー、ファンドマネージャー、大口投資家が新しいポジションを積極的に取る機会は少なくなる場合があります。
相場の勢いが続きにくい
市場に入る大口注文が減ると、値動きの勢いが早く失われやすくなります。ブレイクアウトが通常どおり始まっても、その動きを支える新たな買い手や売り手が不足すると、途中で止まり、元のレンジへ戻ることがあります。
流動性が低下する
注文が少なくなると、相場は長時間ゆっくりと動くことがあります。一方で、流動性の低下によって価格が不安定になり、通常なら影響の小さい注文や予想外のニュースによって、大きく動く場合もあります。
相場を動かす材料が少なくなる
夏でも経済指標の発表や中央銀行会合は行われますが、企業活動、政治、金融機関の動きなどが全体的に鈍くなる場合があります。重要な材料が少なければ、大きなポジションを取ったり、強いトレンドを予想したりする理由も少なくなります。
戦略を調整するメリット
トレンド取引かレンジ取引か
夏の相場はレンジ内に長くとどまることが多く、サポートとレジスタンスがより重要になります。レンジ取引が機能しやすくなる場合がありますが、重要なニュースやボラティリティの上昇によって、明確なトレンドが発生することもあります。
利益目標を調整する
ボラティリティが低下すると、通常の利益目標では遠すぎる場合があります。現在の値幅を直近の平均と比較し、相場の動きが小さいときは、目標を現実的な水準まで引き下げることが大切です。
損切り幅とポジションサイズを調整する
損切りは、相場の根拠に基づいた適切な位置に設定する必要があります。損切り幅を広げる場合は、通常ポジションサイズを小さくします。相場の方向が分かりにくいときは、リスクを下げるか、取引を見送ることも選択肢です。
夏は焦らず相場に合わせる
静かな夏の相場では、より良い取引機会を待ち、落ち着いて判断するための時間を取りやすくなります。現実的な利益目標を設定し、損切りを調整し、取引回数よりも質を重視することで、規律を保ちながら一つひとつの機会を活かしやすくなります。突然のニュースによって大きく動くこともあるため、常に準備を整え、相場の変化に合わせて対応することが重要です。
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